院長Blog

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こころ温まるお話「思い出の跡地に」

「あ、なくなっちゃうんだ」
ある春のこと。近所の公園に、工事予定の看板が立てられていた。
小さなクリーニング店と老舗の中華屋さんに挟まれた小ぢんまりとした公園。
まだ私が幼かった頃、おじいちゃんによく遊んでもらった思い出の公園だ。

夕食を食べながら、家族にそのことを伝えた。
おじいちゃんは「古い公園だからなぁ」と笑いながらおしんこをかじっていた。その笑顔は、なんだか少し寂しそうだった。

ほどなくして錆びついた鉄棒や滑り台が撤去され、公園は更地になった。
何もなくなった土地を横切ると、少し込み上げてくるものがあった。おじいちゃんと遊んだ記憶が、ふいに蘇る。
鉄棒で前回りを教えてくれた。滑り台の下で小さかった私を抱きとめてくれた。

「ああ、やっぱり寂しいなぁ。どうせまた駐車場にでもなるんだろうな」
そう思っていたのだが、やがてなにやら建築が始まった。

工事はみるみるうちに進んで、全容が分かってくる。温かなウッドデッキに、黒くて四角いコンテナハウス。
おや、なんだかお洒落な雰囲気だ。そのうち黒板スタンドが置かれ、見ればチョークでカラフルな花が描かれている。
「フラワーカフェ」という文字に、私は思わず、わっ!と歓喜の声をあげた。この町にこんなお洒落なお店ができるだなんて。
センチメンタルな気分は一転、ハッピーな心地に。だけど次の瞬間、胸がちくりと痛んだ。

後日、私は意気揚々とフラワーカフェに向かった。おじいちゃんを車に乗せて。
リビングに飾る花を選び、カフェスペースでココアを飲む。行く前にはあまり乗り気じゃなかったおじいちゃんだったけど、
いつしか物珍しげにしながらもにこにこ笑顔で花を見ているおじいちゃんの姿に、私は思う。

きっと寂しがるばかりじゃなくてもいいんだ。
だって街が変わっていくのと同じように、私とおじいちゃんの関係も変わっていくのだから。

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