院長ブログです
9歳になる娘が珍しく落ち込んでいた。
先日クラスに転校してきた子と仲良くなりたいのに、うまくいかないのだという。
「今日も一緒に遊べなかったよ」
残念そうにつぶやく娘の姿に、自分が小学生だった頃を思い出した。
5年生の夏、当時通っていた学童にサトルくんという男の子が居た。
今年に入って学童に加わったのだが、あまり馴染めずにいるのか、いつもひとりで寂しそうにしている。
ある時、僕は思い切って声をかけてみることにした。
「サトルくんは、いつも何して遊んでるの?」
僕の質問に、サトルくんは「ゲームとか」と答える。
ゲームかあ。トランプとかUNOならあるけど、絶対そういうのじゃないよなあ。
試しに「どんなゲームが好きなの?」と尋ねてみると、聞かれたことが嬉しかったのか、色んなテレビゲームのタイトルが出てきた。
中には僕が知らないものもあって、どんなゲームか聞いてみると楽しそうに紹介してくれるから、それがまた面白かった。
「いつかゲームを作ってみたいんだ」
会話が盛り上がった弾みか、サトルくんが目を輝かせて語る。それを聞いて、僕はふとひらめく。
「それじゃあ、一緒にすごろく作ってみない?」
突然の提案に、サトルくんは何の話かときょとんとしていた。
「僕もゲーム作ってみたい!けど、紙に書いたりしかできないから、すごろくならどうかなって」
その日から、僕たちは学童ですごろく作りに励んだ。
『100マス進む』『先生のモノマネをする』
お互いの好みや性格がわかるのが面白くて笑っていると、いつしか他の友だちも一緒になってアイデアを出し合っていた。
壁によりかかってずっと周りを眺めていたサトルくんは、もう居なかった。
僕が小学校を卒業したのは、もうずいぶん前のことだが、学童では毎年新入生の時期になると、新しいすごろくを作る習慣ができ、
『ともだちすごろく』という立派な遊びになっているらしい。
サトルくんの笑顔を思い出し、僕は娘に言った。
「一緒にすごろく作ってみない?」