院長ブログです
「使った後は、ちゃんとおかたづけしないと!」
おもちゃが散らかっている部屋を見ると、つい小言を言ってしまう。
4歳になったばかりのエミは、やだー!と言いながら、今日も部屋中を駆け回っていた。
お昼になると急に雨が降り出した。
天気予報では言ってなかったのに、とキャスターに文句を言いながら洗濯物を取り込む。
その間、娘はというと、相変わらず片付けもせずに、なにやら絵を描いていた。
ため息をつきながら少し濡れてしまった洗濯物を干し終わると、エミは描き終えた絵を掲げながら私の周囲をぐるぐると回りはじめた。
「ママー、見て見て!」
絵に一瞬だけ目を向け「上手に描けたね。でも、お買い物行かなきゃいけないから、エミも片付けて支度してね」と伝えたが、娘は不満そうだった。
そして、出掛けようとして声をかけると、エミはグズりだしてしまった。
泣きわめく娘と盛大に散らかっている部屋を見るなり、なんで言う事を聞いてくれないのかと疲れがどっと押し寄せてくる。
思わず声を荒らげて叱ろうとしたその瞬間、さっきの絵が視界に入る。
そこに描かれていたのは、楽しそうに笑う私たち家族の姿だ。
夫は最近、仕事で帰りが遅く、家事と育児に追われる私も心に余裕がなくなっていた。
エミの気持ちに気づくタイミングはいくらでもあったのに。
部屋のすみっこで丸くなった小さな背中に「お買い物は今度にして、ママと一緒に公園いこうか?」と尋ねると、エミは振り返り、「いくー!」と嬉しそうに答えた。
「じゃあ、おかたづけが終わったらね」
それを聞いた娘は、さっきまでグズっていたのが嘘のように素直におかたづけを始めた。
あっという間に終わらせ「ママー、早く!」と急かしてくる。
娘がくれた時間を大事に使おう。
そう思いながら娘の小さな手をギュッと握りしめ、玄関を出る。
すっかり雨もあがって爽やかな秋晴れが広がっていた。