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こころ温まるお話「おばあちゃんのお弁当」

       

娘のなっちゃんは小学1年生。もうすぐお姉ちゃんになる。

ある日、学校から遠足のお知らせを持ち帰ってきて「おべんとうはウサギさんかクマさんがいい!」と、おねだりしてきた。
私の作る『キャラ弁』が大好きで、お弁当のときは必ずリクエストされる。

けれど遠足の直前に出産が重なり、娘のお弁当は私の母にお願いすることになった。

「ママのおべんとうじゃなきゃやだ!」

しばらく渋っていた娘だが、「おばあちゃんのお弁当、おいしいから大丈夫だよ」と何度か説得すると渋々頷いて納得してくれた。

それから数日経ち、遠足も終えたある日、母と娘が揃ってお見舞いに来てくれた。

「ねえママきいてきいて!おばあちゃんのおべんとうすごいんだよ」

病室に入ってくるなり、少し興奮気味で母が作ったお弁当のことを話してくれた。

「おばあちゃんがつくったウサギさんのおにぎり、ぜんぜんウサギさんに見えなかった!」

私は咄嗟に「せっかくおばあちゃんが作ってくれたのに、そんなこと言っちゃダメでしょ」とたしなめたが、娘は「でもね」と続けた。

「すっごくおいしくて、ママのおべんとうみたいだった!ハンバーグもカタチはちがうのに、あじはママのとおんなじだったの!」

不思議そうに話す娘を見て、ああそうか、と思わず笑ってしまう。

「だっておばあちゃんは、ママのママだもん」

私がそう答えると、娘は少し考えて「じゃあ、なっちゃんもいつか、おばあちゃんみたいなおべんとうつくる!」と張り切っていた。

その後も娘の「おばあちゃんのお弁当自慢」が続いた。
学校の先生やお友達におばあちゃんに作ってもらったと言ったら「なっちゃんのおばあちゃんすごいね!」と褒められたこと。
「たまごやきはママのよりおいしかった」というちょっと悔しいことなど。自分のことのように自慢する娘の後ろで、母は照れくさそうに笑っている。

娘がひとしきり話し終え、母が剥いてくれたウサギ型のリンゴを3人で食べていると、

「おばあちゃん、つぎはクマさんのおべんとうがいい!」

と娘のおねだりが始まっていた。

     

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