院長ブログです
「ねぇ、海の家、混んでた?」
帰るなり、なぜか留守番をしていた姉に捕まった。
「日差し、きつかったんじゃない?顔、赤いし」
「イテテテ、触んなよ」
僕は早々に振り切り、シャワーを浴びて部屋へ。海は楽しいけど疲れる。
スマホで撮った写真を眺めながら、気づいたら寝ていた。
思いっきり寝坊して慌てたけど、今日は夏休み最後の日曜。
焦って損したと思いながらリビングへ。
「あの子、ほんと怖がりなんだから」母さんが苦笑している。
「怖い話って、怪談話だろ?昼間は大丈夫だろう」父さんがあきれたように言う。
「まあ、海に行く前日に話聞いちゃって。怖くなっちゃったみたいよ、まったく」
僕はトイレに向かいながら、ああ、そういうことだったのかと、大きく息を吐く。
姉が昨日、妙にテンションが高かったのも、今となってはうなずける。
単に日焼けするのが嫌で、今年は海に行かないのかと思っていた。
僕は閃いた。海を、家につくってしまおう。そして、海の時間を姉にプレゼントしよう。
思い立ったらすぐ、浮き輪に空気を入れた。洗ってないから砂が落ちるけど、気にしていられない。
お風呂場に行き、勢いよく水を出す。コンビニに走り、写真をプリントする。額から汗が流れ落ちる。
気分を盛り上げるために、波の音を流す。海の写真と貝殻を飾る。これでよし。
姉の部屋に行き、浮き輪を渡す。
「え?なに?」
「いいから来て」
お風呂場の扉を開くと、浴槽から水があふれていた。
「やっべぇ」。あふれる水にも構わず「なに?自家製プール?!やったぁ」
姉は浴槽に浮き輪を浮かべて、服のまま飛び乗った。
「ちょっ、うわっ」水をもろにかぶる僕。
「プールじゃなくて、いちお、海!」
びしょびしょになって、ふたりで大笑いした。