院長ブログです
「ただいま!」
元気よく帰ってきた息子はどろんこまみれで、その姿に思わずぎょっとした。
心配する私をよそに、息子は「ちょっと遊んでたら汚れちゃった」と笑っている。
中学生にもなってそんな理由で汚れて帰ってくるとは。
呆れながら「もういいから、早くお風呂に入ってきなさい」と促すと、息子は「はーい」と言いながらお風呂に向かった。
数日経ったある日のこと。
息子とふたり、買い物から帰る途中で「だめよ!モモちゃん!」という大きな声が聞こえた。
後ろを振り向くと、リードを付けた小さな犬がすぐそこまで走ってきており、びっくりして思わず避けようと息子の腕に手を伸ばした。
しかし、私の反応とは裏腹に、息子は「モモちゃん!」とその子を笑顔で迎え入れる。
ほどなくして追いついた飼い主さんも「ごめんなさいね…」と言いかけたところで息子に気づき、息子も犬を撫でながら「こんにちは!」と見知った様子で挨拶をした。
ひとり置き去りの気持ちでいた私に、飼い主の女性は事の次第を話してくれた。
話によると、モモちゃんを可愛がっていたお嬢さんが結婚して家を出てしまい、たまにしか実家に帰ってこないため、モモちゃんは寂しい思いをしていたという。
そんな中、散歩中にたまたま出会った息子がモモちゃんと遊んでくれるようになり、それ以来少し元気になったそうだ。
「この間なんて、遊んでる途中モモちゃんが水たまりに落ちそうになったところを、息子さんがかばってくださってね。優しい息子さんですね」
そんな理由があるなら話してくれれば良かったのに。
女性と別れた帰り道、息子にそのことを尋ねてみると、意外な言葉が返ってきた。
「服を汚しちゃったのは本当だし、言い訳はしたくなかったからさ」
まだまだ子どもだと思っていたのに、いつの間にこんな成長していたんだろう。
「そっか。言い訳しなくてえらい!それに、優しい息子さんって言われて、お母さん嬉しかったな」
そう伝えると、「まあ…お母さんの子どもだからね」と、息子は照れくさそうに笑った。