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こころ温まるお話「アルバムの続き」

       

「うわぁ、レトロ」

大学の夏休みに帰省中の息子が、掃除中に出てきた古いアルバムを眺めながら声を漏らした。
中に挟まれているのは、息子が赤ちゃんのときの寝顔や、幼い息子を私の母があやしている姿だ。

「これの続きはないの?」

そう言われてアルバムを見ると、幼稚園に入る前のところでアルバムのポケットは空になっていた。

「たしか、この頃にデジカメに買い替えたのよ。そのときにデータを失くしちゃってね」

息子は少し唸って考えたあと「前のパソコンに残ってたりしない?」と言って、押入れから昔使っていたノートパソコンを取り出して来た。

パソコンにかぶっていた埃を払う息子に「お父さんとも探したんだけど、見つからなかったよ」と声をかける。

すると息子は「ふふん」と笑って、「こういうのは、探し方にコツがあるんだよ」と、テキパキとパソコンを触り始めた。

小さい頃から外で遊ぶのが大好きで、今どき珍しいくらいゲームやスマホなどに興味を示さない子だったのに、知らぬ間に成長してるんだなと、頼もしくその様子を見ていた。

「ほら、これじゃない?」

そういって見せてくれた画面には、幼稚園の制服を着た息子が、少し得意げにピースをしている。

「やっぱり中学を過ぎると写真が少ないなあ」

しばらく画面をスクロールしていた息子がぽつりと呟く。

「思春期なのか反抗期なのか、撮られるのを露骨に嫌がってたもんね」

息子は「そうだっけ」とおどけてみせた。

「でもさ。そもそも、お母さん達の写真が少なすぎるよ」

息子の言うとおりだ。アルバムにもパソコンにも、写っているのは息子の姿ばかり。
私たちは息子の姿を追うのに夢中で、自分たちの記録をちっとも残していなかった。

それから帰省しているあいだ、息子は近所の公園や、河原などに私たち夫婦を連れ出しては、何枚も写真を撮ってくれた。何でもない風景や姿を、何枚も。

「なんだか妙に写真を撮りたがるな

あ、カメラマンにでもなるのか?」

事情を知らない夫はそう呟いているが、私は黙っておいた。
息子が整頓してくれた写真のフォルダに、また新たなアルバムが増えていく。

     

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