院長ブログです
私は虫がきらいだ。家の中で小さな虫でも出ようものなら、大騒ぎして逃げまどうほどだ。
そんな私の6歳になる息子は、昆虫が大好き。幼稚園が夏休みの今、毎日公園へ繰り出しては虫カゴをセミでいっぱいにしている。「ジジジジジ…バサバサッ」そんな音を立てながらひしめき合っているのだ。
私は夏の暑さの中、冷や汗が出るような気分を味わっている。
セミは家で飼うことが難しい生き物だ。
「かわいそうだから逃がしてあげなさい」と言っても「家に連れて帰る!」と連れ帰っては、翌朝には死なせてしまう…を繰り返していた。
夏祭りの夜、息子と2人で夜道を散歩していた。ふと見ると青白い電灯の横の木に何かがたくさんぶら下がっている。よく目を凝らしてみると、それは脱皮中のセミだった。それは昼間のそれとは違い、白くて緑で透明で…というなんとも幻想的な姿をしていた。
魔法にかかったようなセミの姿に驚いた息子は「うわー…」と言ったきり、口をポカンと開けてじっと見入っていた。「アブラゼミは地面の中で6年も過ごしてから大人のセミになるんだよ」と教えると、「じゃあ僕と同じ年?」「そうだね…」
「あっ!」突然息子が地面を指差した。
そこには羽化の途中で落ちてしまったのか、土の上でアリにたかられ、攻撃を受けているセミの幼虫がいた。「ああ…」息子は悲しそうな顔をしながらも、どうにもできずにじっと見ていた。
その翌日から息子はセミを捕まえても「バイバイ」と優しく木に戻すようになった。
「やっと大人になって空を飛べるようになったんだもん…閉じ込めたらかわいそうだよ」と言う。
必死で大人になろうとする姿、その一歩手前でなれなかった小さなセミの姿は小さな息子に大きな命の尊さを教えてくれたようだ。