院長ブログです
「英司!担当場所の掃除、頼んだぞ!」
父から掃除道具を渡され、ため息交じりに受け取る。
昨晩、夕食のあとに父が大きな声で言った。
「さあ、みなさん!明日は年に一度の大掃除をします!」
小学生の妹と弟が「わたしはベランダ!」「ぼくお庭!」と声をあげると、父は1枚の画用紙を取り出して、各自の分担を記していく。
僕も昔は楽しんでいたが、高校生にもなった今では『遊びにも行けないし面倒だ』という気持ちの方が大きい。
そして今日、やる気に満ち溢れた父が、朝から掃除道具をみんなに配っている、というわけだ。
父は特別掃除が好きなわけではないはず。なのに、なんであんなに張り切ってるんだ?
そんなことを考えながら棚の掃除をしていると、1枚の画用紙が目にとまった。
「あら、懐かしい」
そう言って、キッチンを掃除していた母も僕の手元を覗き込む。それは、数年前に大掃除当番を決めたときの画用紙だった。
ふと、「ねぇ母さん、大掃除って何のためにするの?」と聞いてみる。
「お父さんがね、1年間の嫌なことをきれいに忘れて、家族みんなが来年も元気に暮らせますように…って昔から張り切るのよ」
ふーん、と言ってみたが、内心そんな真面目な理由があることに、僕は少し面食らっていた。
その日の夕食はとても美味しかった。
「お掃除たのしかった!」「ぼくもー!」と、口の周りにご飯つぶをつけてはしゃぐ妹と弟。
母さんはそのご飯つぶを取りながら「お家がきれいになって、ご飯も美味しいね」と、微笑んだ。
こんなにぎやかな食卓も、去年の想いがあってこそなのかもしれない。
「よし、じゃあ来年もみんなで大掃除しような」父は今から張り切ったように言う。
来年はもっと気持ちを込めて参加しよう、そう心に決めた僕は「そうだね!」と、ご飯を口いっぱいに頬張った。