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こころ温まるお話「姉妹の合言葉」

       

「全部わかってたのに!」

リビングで妹が急に大声を出した。
理由は学校から返された75点の算数テストだ。
不正解はすべて計算ミスで、それが妹にとって悩みの種になっていた。

「100点取れたんだよ?」不満気に母に訴えるも、
「ミスしない人が100点取るの」と指摘されてしまい、「もうぜったいミスしない!」と、妹はすねてしまった。

 

その夜、妹が私の部屋に入ってくるなり、照れくさそうに「ねえねえ、どうしたらテストでミスしなくなる?」と聞いてきた。

私も受験時代にミスで失点してしまいとてもくやしかったから、妹の気持ちはよくわかる。
「私もね、たくさんミスして落ち込んだことがあるよ」と答えると、妹は「えっ」と驚きと嬉しさが混じったような声を発した。

「でもね、あるとき気がついたの。自分が間違ってるなんて思いたくないから、ミスに気がつかないんだって」

妹は小さくうなずく。

「だから、“別の誰か”になったつもりで見直してみたら、不思議と色んなことに気づくようになったんだ」

「“別の誰か”って…?」

「私のおすすめは“しっかり者の大人で、確認するときの口ぐせがある人”。誰でしょう?」という私の言葉を聞いた数秒後、妹は「わかった!」と声を上げた。

 

2週間後。
私が家に帰ると、母が「ねえねえ、この子、テストで満点取って先生から『ミスが減った』ってほめられたのよ」と笑顔で話し始めたので、こっそり目配せする私と妹。

「最近うちで問題を解いてるときに、『だいじょうぶ』ってつぶやいてるから何かと思ったけど、あのおかげなのかしら」

 

不思議そうに話す母を見て、私たちは笑い出しそうになるのを我慢した。

電気の消し忘れや、料理の食材が揃っているかなどを確認するとき、いつも自分が「だいじょうぶ」とつぶやくことに、母はいまだに気づいていない。

     

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