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こころ温まるお話「新聞係」

       

息子の初出勤を明日に控えた夜。
私は「就職おめでとう」の言葉と共に、用意していたプレゼントを渡した。

「ありがとう!」と言いながらプレゼントを開ける息子は、中身をみると「ファイル?」と不思議そうな声を出す。
そしてページを1枚めくったところで、「こんなの取ってあったんだ」と吹き出した。

それは息子のユウキが小学校5年生の時。下校時刻をとっくに過ぎて帰宅してきた日のことだ。
息子は学校で新聞係をしているのだが、明後日発行する新聞の原稿を失くしてしまい、放課後もしばらく探していたのだという。

「今から作り直してみるよ」

そう言って部屋に行こうとする息子を引き止め、
「今からって、一人で全部書き直すつもり?」と思わず尋ねる。

「だって、失くしたのは自分だから」と答える息子。
こんなに遅くまで探していたのも、責任を感じてのことだったのだろう。

「ユウキがちゃんと責任をとって一人でやろうとしてるのは偉いことだけど、みんなに相談してもいいんじゃない?」

普段から息子の口数が少ないことを心配していた私は、
あまり抱え込むような子になってほしくないと思うばかり、つい口を挟んでしまった。お節介だっただろうか。

息子はハッとした表情で何かを考えたあと、
「そっか…そうだね!みんなに連絡してくる!」といってランドセルを下ろしながら部屋に向かった。

次の日、息子はまたしても学校から遅くに帰ってきたが、昨日とはうってかわって清々しい面持ちだ。

「全部正直に話して良かった!みんなが手伝ってくれたおかげで一日で完成したし、
なによりみんながどれだけ記事を大切にしていたか、あらためてわかったもん」

そう言って渡してきたのは、無事に完成した学校新聞だった。
記事の最後は新聞係のみんなが紹介されているミニコーナーで、『将来の夢』などが書かれている。

それ以来、息子は出来上がった新聞を持って帰って来ては、作っていて楽しかったことや、
大変だったことをよく話してくれるので、私はその新聞をスクラップブックに貼り付けて大切に保管していた。

息子が「新聞記者になる」という夢を叶えた時に渡すために。

     

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