院長ブログです
僕がアルバイトをしているコンビニは、ビジネス街にある店だからか、無表情で急いで買い物をしていく客ばかりだ。
「いらっしゃいませ」「お弁当は温めますか?」…こちらが何を言っても目も合わせず、ニコリともせずに頷くだけだったり、時には聞こえていないかのように無反応な人もいる。いつしか僕も同じように無表情で目の前の客を適当にこなすだけになっていた。
ある日、レジに「お願いしまーす」と明るい声でカゴを置く若い女性が現れた。(初めて客から「お願いします」なんて言われたな)そう思いながら会計を進めた。
「905円です」
「はい。ちょっと待ってくださいね…。これでお願いします」
「905円ちょうどお預かりします」
「はーい、どうもありがとう!」
気付けば僕は「ありがとうございました!」と笑顔でそのお客さんを見送っていた。そして何気ないこんな普通のやりとりで笑顔になっている自分に少しビックリしていた。
その日帰宅すると、母が「おかえり、夕飯すぐできるよ」と声をかけてきたけれど、僕はいつも通り返事もせず通り過ぎた。
僕はハッとした。これってコンビニの無反応な客と一緒じゃないか…?僕の帰宅に合わせて温かい夕食を用意してくれる母に、自分もいつもあんな態度をとっていたのか…。僕は猛烈に反省をした。「いただきまーす」「ごちそうさま!」今日はいつもより明るく、ちゃんと母に聞こえるように言ってみた。そんな僕に母は戸惑っていたけれど、なんだか嬉しそうに、「コーヒーでも淹れようか」なんて言っている。
気持ちの良い言葉が人を笑顔にすることを実感した。「あのお客さん、また来るかなぁ…」
今日お店に来たあの女性を思い出し、僕はちょっとウキウキしながら母の淹れてくれたコーヒーを一口飲み込んだ。