院長ブログです
ポポン、とスマホが鳴る。ちかちゃんからだ。
「今何してる?ひまだよ~」という短いメッセージに、雨の絵文字がついている。
小学生最後の夏なのに、今年はなかなか梅雨が明けない。
「スマホばかり見ないの」
私がちかちゃんに返事を打っていると、突然後ろからお母さんの声がして、スマホを取り上げられた。
返してよ、と振り向くと、スマホの代わりにハガキを渡された。
「はい、みゆきにおばあちゃんからハガキ。暑中見舞いだって」
「ねえ、スマホ返してよ。ちかちゃんに返事しなきゃ」
「はいはい。いいけど、おばあちゃんにもお返事書きなさいよ」
思わずため息が出た。おばあちゃんは大好きだけど、ハガキを書くのは気乗りしない。
私は不器用で、どうしても字が大きくなってしまう。いつも紙いっぱいになって、それが不格好で恥ずかしかった。
「変な気を使わないで自分なりに、丁寧に書けばいいの」
私の心を見透かしたようにお母さんが言う。
「でも私の字を見たら、おばあちゃんががっかりするかも」
「そんなことないよ。よく見てごらん。みゆきの字とおばあちゃんの字、そっくり」
そう言われてもう一度ハガキを見ると、驚いた。確かに似ている。
おばあちゃんも大きな字で、ハガキいっぱいに書いてあった。
「本当だ!え、なんで?」
「みゆきのおばあちゃんだからね」
おばあちゃんから字を習ったわけじゃないのに、不思議。
眺めていると、おばあちゃんは「私のおばあちゃん」なんだなって、だんだん嬉しくなってきた。
「ねえ、お母さん。新しいハガキある?」
私の字が似ていること、返事を書いたらおばあちゃんも気づくかな。
さっきまであんなに自分の字が嫌いだったのに、今はハガキを書くのが楽しくなっている。