院長ブログです
松山下公園にはたくさんの猫が住み着いていた。
ピクニックに来たカップルやウォーキングを楽しむ老夫婦などがエサを与え、可愛がる。タケルもそのうちの一人だった。
「おい!猫にエサをあげるな!」
公園の管理人が叫んだ。
タケルが猫たちに猫缶を与えていると、詰所から管理人が走ってきた。
「ご、ごめんなさい…」
怯えるタケルを尻目に、管理人は猫缶をゴミ袋に投げ入れた。
その荒々しい動きに、猫たちはあっという間に散り散りばらばらに。
「まったくもう。二度とするな!」
タケルは圧倒され、言葉を失った。
遠くの木陰に目をやると、猫たちが心配そうにこっちを見ていた。
タケルはそんな管理人が大嫌いだった。
エサを与えて何が悪いのだ。
母親にそのことを話すと、意外な言葉が返ってきた。
「管理人さんは悪くない。あなたもそのうちわかるわよ」
納得がいかず、子供扱いされていることにも苛立ちを覚えた。
ある夜、公園のトイレの横で、顔に傷を負った子猫が毛を逆立てて威嚇していた。
近くには管理人がいる。
「やっぱり…」
猫をいじめているところを写真に撮れば、管理人を辞めさせられる。
カメラを構えたタケルに、管理人が声をかける。
「きみ!あの部屋からバスタオルをとってきてくれ!」
いつもの口調とは違っていた。
タケルは言われた通り、バスタオルを持ってきて渡した。
「縄張り争いでやられたんだ。この辺りは猫が増えすぎた」
猫にはテリトリーが決まっている。
増えすぎると縄張り争いで子猫が犠牲になる。
必死になって子猫を手当てする管理人の真剣な横顔に、タケルは自分の過ちを恥じた。
瞳に涙がたまる。管理人が無言で頭をなでると、タケルはせきを切ったように泣き出した。