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こころ温まるお話「10年後」

       

その手紙の書き出しには『この手紙を自分で読むことはないかもしれません』とあった。
「何て書いてた?」と覗きこむ友だちに、「今読んでるとこ」と言いながら、僕は当時を思い返す。

10年前、僕は数人の仲間たちと、小学校の卒業記念にタイムカプセルを埋めた。
地元の中学に行く皆と違い、僕だけは私立校への入学が決まっていた。
この手紙の書き出しには『タイムカプセルを開ける日、自分はその場にいるだろうか、10年後も皆と友だちでいられるだろうか』という、
12歳の僕の不安が表れている。自分だけ海に放り出されるような気持ちだったのだろう。

実際、中学が始まってからは遅くまで補講があり、塾にも通っていたせいで、遊びに誘われても断ることが増えた。
中1の夏休みの夜、夏期講習の合間をぬって4か月ぶりにようやく会えた皆が小麦色の肌をしていて、
寂しかったのを覚えている。その夜、空き地で皆と花火を楽しんでいると、線香花火を片手に一人が言った。
「もう一緒に遊んでくれないかと思った」
そんなふうに思われていたことに驚いて、「そんなわけないよ」と慌てて返す。

「……本当は、皆と同じ学校に通いたかった」
消え入りそうな線香花火を見ていると、ずっと心の内に秘めていた気持ちが口からこぼれてしまった。
「今からでも遅くないじゃん!」と皆が声を揃えて言った。
思いがけない返答で笑顔なのか泣き顔なのか区別のつかない顔になってしまったけれど、
そのとき初めて、皆が今でも変わらず大切な友だちと思ってくれていることに気づくことができた。

それからは、いつも一緒にいられないけれど繋がっていられる友だちがいたから、一人でも気にならなくなった。
高校や大学も同じ学校ではなかったけど、バイト先での苦労も、初めて恋人ができた時も、お互いに知っている。
成人式の後には皆でお酒を飲んだ。

不安げな手紙の文字を追いながら、10年前に戻って「大丈夫だから」と言ってやりたくなる。
でもそれはできないから、代わりに皆に向かって、
「タイムカプセル、もう一回埋めようぜ」と言った。
22歳の僕たちはこれから社会人になり、また大きく環境が変わる。それでも、皆と友だちであり続けられる自信が、今はある。

 

     

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