院長ブログです
「ドーン…ドーン…」
始まった。遠くから聞こえてきた花火の音。
今日は毎年仲の良い友人と行っている、地元の花火大会だ。
「いいなあ、今年も行きたかったな…」
私は足のけがで入院中のため、今年は行くことができない。
お見舞いに来てくれた友人には「今年は病院でおとなしくしてなさい!」なんて言われてしまった。
病院の早い夕食を食べ終え、ポツンと一人きりの病室。
ベッド脇の小さなTVをつけてぼーっと眺めていると、突然ガラッと病室のドアが開いた。
「どうしたの!?」
そこには花火大会に行っているはずのみんなが立っていた。
「一緒に花火見ようよ」と言う。
「ここからじゃ見えないよ…」と言う私を、「いいからいいから」と、車いすに座るように促す。
「はい、ここが今年の花火鑑賞席!」
と、病室とは別の階のエレベーターホールで車いすを止める。
「えー?ここ!?」
「外を見てみて」
と言われ、小さな窓の外を見るとビルとビルの隙間からちょうど小さく華開く花火が見えた。
話を聞くと、この病院の屋上には出ることができないことを知った友人たちが、花火が始まった頃を見計らって、どこか見える場所がないか院内を探しまわり、ようやく見えるポイントを見つけてくれたのだそうだ。私は花火が見られたことよりも、“今年も私と一緒に花火を”という友人たちのその気持ちが何よりうれしかった。
いつもは浴衣を着てビール片手に大輪の華を眺めている花火大会。
今年は浴衣もビールも無い、ビルの隙間の小さな花火だけれど、私の目には今までの中で一番きれいに映った。
(ありがとう…!)
私の横で花火を眺める友人たちの横顔を見つめながら、心の中でつぶやいた。
今年の花火はきっと毎年夏が来ると思い出す、大切な思い出になるはずだ。