院長Blog

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こころ温まるお話「僕だけの特等席」

       

僕の祖父は農業をしており、日焼けで一年中真っ黒だ。僕が幼い頃、祖父によく肩車をしてもらった。祖父の頭越しに見る眺めはいつもよりも格段に高く、頭につかまりながら「大人ってこんなに高いんだ!!」と思ったものだ。
日焼けしたシワだらけの顔で微笑み、頭をなでてくれる。そんな祖父が僕は大好きだった。

昔、「都会っ子に農業体験を」と頼まれ、祖父の畑に数名の幼稚園生が来たことがあった。
畑を見るのも珍しい子どもたちは、みんな興奮気味。

「このおじいちゃん、まっくろけ!」

「洋服も土だらけー!」

と騒ぎたてると、保護者たちは慌てた様子だったけれど、祖父は怒るどころか

「そうだろう、わしは一年中外で遊んでばかりだから真っ黒なんだよ。羨ましいだろ?」

と笑い、その後も

「これはこうすると元気に大きく育つぞ」

「ほう、初めてにしてはうまいもんだ」

と優しく声を掛けていた。

すると、帰る頃には

「おじいちゃん…また遊びに来てもいい?」

と手を握って甘える子まで現れた。

はじめこそ(おじいちゃんをバカにしてムカつく!)と思っていたけれど、

「おじいちゃんの手、おっきくて土だらけだけど、なんかすべすべして気持ちいいね…」

と小さな手で祖父の大きな手をなで回す姿を見て、(僕のおじいちゃんなのに!)という少しの嫉妬と、(僕のおじいちゃんだぞ、羨ましいだろ!)と誇らしい気持ちで複雑だったことを思い出す。

 

最近、歳を重ねた祖父は物忘れをすることが多くなった。幼い頃、あんなに大きく見えた祖父よりも、今では僕の方が大きくなった。でも、肩車をして夕食前に2人で散歩をしてくれた、あの頃の強くて大きな祖父を忘れない。おじいちゃんの頭越しに見た風景。それは僕の一生の宝物だ。

     

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