院長ブログです
幼稚園の年長組に通う息子が言った。
「ねえ、お風呂屋さんにもうお客さんがいるよ」
私達がよく行く公園の隣にはスーパー銭湯があり、
営業開始がお昼からなのに午前中から人影が見えて不思議に思い聞いてきたようだ。
「あの人はお店の人で、お風呂を綺麗にしてくれているんだよ」
私が教えると息子は「たくさんのお風呂があると大変だね」と返す。
「おかげでみんな気持ちよくお風呂に入れるんだから、感謝しないとな」
そう続けた私に息子は「そうだね」と返事をしたが、それからしばらく何か考え込んでいた。
お昼になり家に帰ろうとした時、息子は突然「“かんしゃ”ってどうすればいいの」と尋ねてきた。
少し戸惑いながら「そうだな、ありがとうって伝えることかな」と答えたが、まだ腑に落ちない様子。
「うちのお風呂はひとつだけど、お母さんは他にもお掃除ぜーんぶやって大変だよね。どうすれば“ありがとう”って伝わるかな」
私も妻に任せきりで申し訳ないという気持ちがあったので、息子の言葉が胸に刺さった。
我が子ながら感心しつつ、私からひとつ提案をする。
「それなら、お母さんの代わりに掃除をしてあげるのはどうかな?綺麗にしてあげたらお母さん喜ぶぞ」
そう伝えると、息子の顔は一気に明るくなった。
家に着くなり、お風呂掃除をすると宣言して走り去る息子。
その様子を見て首を傾げた妻に今日の出来事を話しながら、私も日頃の感謝をこめて何か…と考えていると、
お風呂場から「ねえー!どうやって掃除するのー?」という声が響いてきて、私は「ほらほら、出番ですよ」と妻に送り出された。
その日の夕飯はいつもより少し豪華で「今日は二人がお掃除を手伝ってくれたから、時間が余っちゃって」と妻の声も弾んでいた。
料理を運ぶ私に「明日も一緒にお掃除しようよ」と息子は嬉しそうに言う。
「はーい、お待たせ」と料理を並べる妻の笑顔を見て、私も”小さなお風呂屋さん”を見習い、妻にもっと感謝を示すことにしようと思った。