院長ブログです
隣の席のけんた君、私はちょっと苦手。
どうしてかというと、けんた君は声が大きい。
授業中もしゃべるからよく注意されているし、とにかく、全然仲良くなれそうにない。
でも今日、図工の時間で隣の人同士で、顔を描くことになった。
つまり、私はけんた君とペア。正直、嫌。もうずっと緊張している。
「隣の席の人と机を向かい合わせてください。相手の顔をよく見て、描いてね」
先生がそう言うと、教室のみんなが机をがたがた鳴らす。私もけんた君と机を向かい合わせた。
「よろしくね」
私が勇気を出して言ってみると、けんた君はチラッとこちらを見ただけだった。
「ねえ、ちょっとこっち向いて」
しばらくして、けんた君に声をかけられた。前を見ると目が合う。
あ、思ったよりも目が大きい。絵を描くために下を向いているからわからなかった。
「目が描けないから、見たいんだ」
「うん!私も今思った。もう描いちゃったんだけど、ちょっと違ったみたい」
同じだったのが嬉しくて、思わず答えた。
するとけんた君は、「見せて」と私の絵を覗きこんだ。お返しに私もけんた君の絵を見てみると、なぜか私のほっぺが黒い。
「ねえ、なんでほっぺが黒いの?」
「だって黒いもん」
手鏡を出して見てみると、確かに黒い。手についた鉛筆で顔を汚していたのだ。
急いで拭くと、けんた君は「あっ」と声をあげて、紙に描かれた私のほっぺに消しゴムをかけた。
それがなんだかおかしくて、私が笑うと、けんた君も笑った。
「僕、えりかちゃんのことちょっと怖いと思ってたけど、しゃべってみたらそんなことないね」
また同じことを考えていた。
しゃべったこともないのに、仲良くなれないなんて勝手に決めつけていたけど、けんた君ってお話してみたらとっても面白くて仲良くなれそう!
描き終わったお互いのにがおえを見てみると、私もけんた君もにっこり笑っていた。