自費診療と保険診療の違いをご存じですか?
「自費治療」という言葉を聞くと、どのような印象を持たれるでしょうか?
「一部のお金持ちがするもの」、「贅沢品」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。
日本の健康保険制度は諸外国に比べて、大変優れていると言われていますから、多くの方がそのように感じるのも無理はありません。
しかしながら、歯科治療の場合は内科や外科と異なり、保険治療範囲は非常に限られています。図と動画をご覧下さい。
「自費診療」と記載してある、大きく囲まれた部分が歯科で用いることの出来る材料や治療法だとすると、保険が適用される範囲は小さな枠に囲まれた、ごく一部の範囲であることがわかります。それでは、自費診療と保険診療では具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
次の画像は、保険診療と自費診療それぞれで入れたかぶせものが、5年経過時にどのような色の変化が起きたかを示しています。
保険診療では、レジンとよばれるプラスチックの素材が使われます。 プラスチックはその性質上、食事をするたびに水分を吸収してしまうため、時間が経つと変色していき、見た目が悪くなっていきます。
それに対して自費診療では、セミラック(陶器)を用いますので、時間の経過とともに変色することがありません。 写真をご覧になり、どのようなご感想を抱かれましたか。 保険が適用されるレジンは、5年経過時点でかなり黄ばんでいるのに対して、自費診療のセラミックは黄ばむことなく、周りの歯と同じ白さを保っています。
また、患者様にとって分かりづらい部分ではありますが、歯科医師として主張させて頂きたいのは、自費治療は見た目の美しさだけではなく、「虫歯再発リスクの低下」、「体への優しさ」にもつながるという事実です。 この事柄については、これから説明させて頂きます。
虫歯治療により削られた歯は、詰め物・かぶせものを入れる必要があるため、材料や治療方法によっては、詰め物・かぶせものと歯の境目に隙間ができることがあります。 この隙間は人間の目から見ると気になるほどの大きさではありませんが、お口のなかにたくさんいる虫歯菌が侵入するには十分すぎる大きさです。この隙間から虫歯菌が侵入することで、虫歯の再発リスクを高めることになります。
この様な事を避けるために我々歯科医師は、詰め物・かぶせものの隙間をぴったりと埋めようと努力しますが、保険診療で使用できる材料ではこうしたことに限界があり、せっかく治療した歯も数年すると再治療になってしまうケースが非常に多いといえます。
それに対して自費診療の材料を用いることで、人口エナメル質を作り歯の表面を保護して、詰め物・かぶせものと歯の間をぴったり埋めることが可能となります。
保険診療と自費診療の違いを分かりやすく示したものが以下の画像になります。 左が保険適用の銀の詰め物で、右が自費診療の金の詰め物です。
写真をご覧頂いて少し分かりにくいかもしれません。 緑色の線で囲んだ箇所が、詰め物と歯の間に隙間ができる箇所です。
左の写真を見ていただくと白色のものがありますが、これは「セメント」とよばれる歯科用接着剤です。保険が適用される材料で詰め物(メタルインレー)を作ると、ぴったりはまるものを作ることができず隙間ができてしまいます。 その隙間を埋めるために歯科用セメントを使用するのですが、いくらセメントで隙間を埋めたとしても、収縮する性質を持つセメントは、時間が経てば縮んでいき隙間が出来てしまいます。
それでは、右の写真の自費診療でつくった詰め物(ゴールドインレー)はいかがでしょうか。 見事に歯とフィットしていて、隙間がありません。 隙間がないということは、虫歯菌が侵入することが限りなく少なく、虫歯の再発リスクも限りなく小さいということです。
金属イオンが身体に及ぼす影響は人によって様々ですが、場合によっては金属アレルギーによる発疹(ほっしん)が起きることがあります。 また、金属イオンが歯茎に沈着することによって、歯と歯茎の境目に黒い線ができてしまうブラックライン(タツー)も金属イオンの弊害の一つです。
近年では身体への優しさにこだわったメタルフリー治療(金属を一切使わない治療)を全額自己負担で希望される方も非常に増えています。
「保険診療と自費診療の違いは何だと思いますか?」と患者様にお伺いすると、「材料が良い」と答えられる方、又は「充実した治療が受けられる」と考えられる方が多いようですが、最大の違いは、「治療精度の高さ・十分な治療時間」にあります。
保険診療は、公的機関によってあらかじめ治療費が決められていて、(CT・マイクロスコープ等の設備投資を十分に行っている場合、)健全な医院経営が出来ないのではないかと驚くほどの低価格治療費に設定されています。場合に拠っては、東南アジアの治療費より日本の治療費の方が安い場合もあります。
時間そのような背景があるため、どうしても限られた時間・費用の中での治療になってしまい、「~という治療には1,000円」と出来高払いの保険診療の場合には、じっくりと時間をかけて丁寧に治療をすることが出来ないのが実情です。
本音の処、「治療費を安く抑えて丁寧な治療をしたい」と思いますが、そのような診療スタイルを続ける限り、医院に十二分な設備投資が出来ず、本当に困られている患者様の手助けをすることができません。
一方で、自費診療では、十分な時間と最高の材料を使って、再治療の必要性を限りなく抑え歯を長持ちさせられる歯科治療が行えるのです。